BtoB営業の成約率が上がらない本当の理由──「売り方」を変える前に「見方」を変えろ
BtoB営業の成約率が上がらない本当の理由──「売り方」を変える前に「見方」を変えろ
その提案書、顧客には「ゴミ」に見えているかもしれない
丁寧に作った提案書。
何度も練習したトーク。
競合より安い価格設定。
それでも、返事は「検討します」。
BtoB営業の現場で、この言葉ほど営業マンの心を削る言葉はない。しかし考えてみてほしい。「検討します」は断りではなく、実は**「あなたの提案は、私が社内で動く理由にならない」**という正直なサインだ。
つまり、問題は提案の質でも、営業マンの能力でもない。顧客の”社内事情”という見えない壁を、まったく考慮していないことにある。
BtoBが「BtoC」と根本的に違う、たった一つの真実
多くの営業マンが陥る罠がある。それは、BtoBの商談を「個人を口説く作業」だと勘違いすることだ。
BtoCなら、目の前の一人が「欲しい」と思えば購買は完結する。しかしBtoBでは、あなたが商談している担当者は、社内に存在する複数の”見えない審査員”たちを説得しなければならない立場にいる。
経営層、財務部門、情報システム部、現場のベテラン社員──彼らは商談の席にいないが、意思決定に深く関与している。
水平思考でここを逆転させると、こういう発想が生まれる。
「自分が顧客を説得するのではなく、顧客が社内を説得できるように設計すること」が、BtoB営業の本質だ。
この視点の転換だけで、成約率への向き合い方がまるごと変わる。
成約率が上がらない営業に共通する「5つの思い込み」
思い込み① 「良い製品なら売れる」
品質は必要条件であって、十分条件ではない。顧客企業の担当者が上司に稟議を上げるとき、必要なのは「良い製品である証拠」ではなく「導入しないとどんなリスクがあるか」という危機感の言語化だ。人は利益より損失を恐れる。プロダクトの魅力より、「現状維持のコスト」を可視化する方が、稟議は通りやすい。
思い込み② 「価格を下げれば決まる」
値引きは劇薬だ。短期的に成約率が上がるように見えて、実は「この会社は粘れば下がる」という学習を顧客に与える。さらに深刻なのは、値引きによって成約した案件ほど、後の解約率や追加受注率が低い傾向にあることだ。価格競争から抜け出すには、価格ではなく**「比較軸そのものを変える」**提案が必要になる。
思い込み③ 「商談回数を増やせば親密度が上がる」
関係構築は大切だ。しかし、目的のない訪問を繰り返すことは、顧客の時間を奪う行為でもある。BtoBの顧客担当者は慢性的に忙しい。会いに行くたびに「また来た」と思われる営業より、「この人と話すと、何か気づきがある」と思われる営業になることの方が、成約への道は圧倒的に短くなる。
思い込み④ 「提案内容が刺されば決まる」
提案の内容よりも、提案のタイミングの方が成約率に与える影響は大きい。顧客企業には予算サイクル、組織変更、経営方針の転換など、外から見えない「動くタイミング」が存在する。そのタイミングを外した提案は、どれだけ完璧でも「今じゃない」で終わる。
思い込み⑤ 「最後のクロージングが肝心だ」
成約はクロージングで決まらない。クロージングは、それ以前のプロセスの結果が出る場所に過ぎない。クロージングで詰まる案件は、初回接触の設計か、ヒアリングの深さか、提案の構造に問題があることがほとんどだ。
具体的な解決策──成約率を構造的に上げる6つのアプローチ
解決策1. 「担当者の稟議書」を一緒に作る
最も即効性がある打ち手のひとつが、担当者の社内説明を支援することだ。具体的には、商談の中で「上司への説明資料、一緒に作りませんか?」と提案する。費用対効果の試算、リスクの整理、他社事例の提示──これらを担当者が社内で使えるフォーマットで渡すことで、あなたの提案は「社内の味方」を得る。営業マンは顧客の社外営業部隊になる、という発想の転換だ。
解決策2. 「現状維持の痛み」を数字で可視化する
「導入するとこんなメリットがあります」という説明から、「今のやり方を続けると、年間でこれだけのコストと機会損失が発生しています」という説明に切り替える。人は現状から逃げるために動く力の方が、未来を掴むために動く力より強い。導入後の未来ではなく、放置した場合の現在地のコストを丁寧に描くことが、意思決定を加速させる。
解決策3. 「購買の地図」で顧客の社内構造を把握する
商談の初期段階で、意思決定に関わるステークホルダーを全員洗い出す習慣をつける。担当者、決裁者、影響者、拒否権を持つ人──それぞれが何を不安に思い、何を重視しているかをマッピングする。この「購買の地図」を持っている営業と持っていない営業では、提案の刺さり方がまったく異なる。見えない審査員を、見える化することが先決だ。
解決策4. 「タイミングセンサー」を磨く情報収集の仕組みを作る
顧客企業のプレスリリース、決算情報、役員の交代、業界ニュース──これらを定期的にウォッチする仕組みを作る。組織が動くタイミングには必ず予兆がある。新しい経営方針が出た直後、人事異動の後、競合他社が問題を起こした直後──こうしたタイミングを捉えた接触は、同じ提案でも受け取られ方がまるで変わる。
解決策5. 「比較軸を自社に有利なものに再定義する」
競合と横並びで比較されたら、価格と機能のゲームになる。そこから抜け出すには、顧客が「何と何を比べているか」という比較の前提自体を変えることが必要だ。たとえば「他社のシステムと比べる」ではなく「現状の業務フローと比べる」という軸に変えるだけで、競合は土俵から消える。自社が最も輝ける比較軸を、商談の早い段階で設計することが成約率を左右する。
解決策6. 「失注の解剖」を組織の文化にする
成約率を上げたいなら、成功事例より失注事例を徹底的に分析する。なぜ断られたのか、どのタイミングで温度が下がったのか、誰の反対が決め手になったのか。失注には、組織が学ぶべきすべての情報が詰まっている。月に一度の失注振り返りを習慣化するだけで、チーム全体の成約率は確実に上昇する。
最後に──BtoB営業で成約率を上げる「本質的な問い」
あなたは今日の商談で、こう考えていただろうか。
「どうすれば顧客に買わせられるか」ではなく、
「どうすれば顧客が、社内でYESを取れるか」
この問いを持って商談に臨む営業マンは、顧客にとって単なるベンダーではなく、**「社内を動かすパートナー」**になれる。
BtoB営業において、成約率とは「説得力の高さ」ではない。**「顧客の社内で何が起きているかを理解している深さ」**の反映だ。
売り方を変える前に、見方を変える。
それだけで、あなたの営業はまったく別の景色を見始める。