「売れる人」は営業しない ― 販売戦略を根本から覆す「PDCA解体新書」で営業の成約率を劇的に上げる方法 ―

「正直に言います。私は10年間、PDCAを『回しているふり』でした。毎月の報告書には綺麗な表を作り、『改善点』を書き込み、上司に提出していました。でも、数字は変わらなかったのです」

これは、ある中堅IT企業の営業マネージャー・田中さん(仮名)の言葉です。彼のチームは毎月のPDCAレポートを欠かさず提出し、KPIも設定し、日報も書いていました。それでも成約率は12%前後をうろうろするだけ。

田中さんのチームが変わったのは、「PDCAを回すのをやめた」瞬間からでした。正確には、従来の「形だけのPDCA」を一度解体し、販売戦略の根本から再構築したのです。結果、6ヶ月後には成約率が28%まで跳ね上がりました。

本記事では、田中さんのチームが実践した「PDCA解体新書」の全貌をお伝えします。水平思考(ラテラルシンキング)を駆使し、営業と販売戦略の常識を覆す具体的なアプローチです。

第1章:「PDCAが回っている」という幻想

まず、不都合な真実をお伝えします。多くの営業組織で「PDCA」と呼ばれているものは、実際には「P→D→P→D」の無限ループです。「Check」と「Act」が機能していないのです。

症状①:「Check = 数字の確認」になっている

「今月の成約件数15件、目標未達」。これはCheckではありません。ただの「結果の読み上げ」です。本当のCheckとは、「なぜその結果になったのか」を解明すること。商談のどのフェーズで、どんな理由で顧客が離れたのか。そこまで掘り下げて初めて意味があります。

症状②:「Act = 『もっと頑張る』」になっている

「来月はアポ件数を増やしましょう」「提案の質を上げましょう」。これらは全て「精神論」であり、販売戦略ではありません。何を、どのように、いつまでに変えるのか。その具体性がない限り、次のサイクルも同じ結果になります。

症状③:「Planが『去年の踏襲』」になっている

「前年同月比110%」という目標設定は、一見合理的に見えます。しかし、市場環境も競合状況も顧客の購買行動も変化しているのに、「去年の延長線」で計画を立てる。これは販売戦略の不在と同義です。

💡 水平思考の問い:「そもそも、今回しているPDCAは『何のために』回しているのか?」

第2章:水平思考で見えた「売れない営業」の6つの盲点

垂直思考(「売上が低い→訪問を増やそう」)では見えない盲点が、水平思考で問いを変えると浮かび上がります。

盲点①:「誰に売るか」より「誰に売らないか」が決まっていない

営業の常識は「ターゲットを絞れ」です。しかし、それ以上に重要なのは「追いかけない顧客」を明確にすることです。成約可能性が低い顧客に費やす時間は、そのまま機会損失です。「売らないリスト」を作る勇気が、成約率を劇的に変えます。

盲点②:「初回訪問」で勝負が決まっている

多くの営業パーソンは「提案書の出来」や「クロージングのテクニック」に注力します。しかし、水平思考で見ると、勝負の8割は「初回接触の最初の5分」で決まっています。顧客が「この人の話をもっと聞きたい」と思うかどうか。その分岐点を設計できているかが鉤です。

盲点③:「顧客の『本当の買わない理由』」は口に出ない

「今はタイミングじゃない」「予算がない」――これらは「社交辞令」であり、本音ではありません。本当の理由は「あなたの提案で社内を説得する自信がない」「導入後のリスクが見えない」など、もっと深いところにあります。この「水面下の不安」にアプローチできるかどうかが、販売戦略の核心です。

盲点④:「提案書」が「自社のカタログ」になっている

提案書の最初のページが「会社概要」や「製品紹介」から始まっていませんか?顧客が知りたいのは「あなたの会社」ではなく「私の課題がどう解決されるか」です。提案書の1ページ目は「顧客の誾題の言語化」であるべきです。

盲点⑤:「商談後の沈黙期間」が管理されていない

提案後、「ご検討ください」と言ってから次の連絡まで何日空いていますか?この「沈黙期間」こそが、顧客の購買意欲が急速に冷めるタイミングです。提案後48時間以内のフォロー設計があるかないかで、成約率は大きく変わります。

盲点⑥:「営業プロセス」が属人化している

トップ営業のノウハウが「あの人はセンスがあるから」で片付けられていませんか?再現可能なプロセスに落とし込まない限り、チーム全体の販売戦略にはなりません。「センス」を「ステップ」に分解することが必要です。

第3章:「PDCA解体新書」――6つの盲点を潰す具体策

解決策1:「ネガティブペルソナ」を作る

ターゲット顧客像(ペルソナ)は多くの企業が作っています。しかし、「追いかけてはいけない顧客像」を明文化している企業はほとんどありません。

具体的には、過去1年間の失注データを分析し、以下のパターンを抽出します。

  • 失注率が高い業種・企業規模・役職
  • 商談が長期化して自然消滅するパターン
  • 競合に負ける典型的な条件

この「ネガティブペルソナ」に該当する見込み客へのアプローチを減らすだけで、営業リソースが高確度の案件に集中し、成約率が自然と上がります。

解決策2:「ファースト・5ミニッツ」設計図

初回接触の最初の5分間を徹底的に設計します。顧客が「この人の話を聞きたい」と思うスイッチを入れる構成です。

時間

アクション

具体例

0〜30秒

業界インサイト

「御社の業界では今、○○が大きな課題になっていますよね」

30秒〜2分

仮説の提示

「御社でも○○の影響が出ているのではないかと推察しています」

2分〜4分

課題の探索

「実際のところ、どのあたりが一番のペインポイントですか?」

4分〜5分

価値の予告

「同業の○社では、この課題に対して○○の成果が出ています」

 

💡 ポイント:商品説明は一切しない。「課題の共感」だけで最初の5分を終える。

解決策3:「買わない理由マップ」を先回り設計する

顧客の「本当の買わない理由」は、大きく3層に分かれます。この3層それぞれに対する「先回りツール」を準備するのが、販売戦略の核です。

階層

顧客の心理

先回りツール

表層(口実)

「今は忙しい」「予算がない」

導入時期シミュレーション表

中層(不安)

「社内を説得できない」「失敗が怖い」

社内稟議用サマリー+ROI試算書

深層(本音)

「自分の評価に関わる」「前例がない」

同業種・同規模の成功事例+担当者インタビュー

 

この3層のツールを事前に用意し、商談の中で顧客の反応に応じて出し分ける。これが「先回りの販売戦略」です。

解決策4:「提案書の1ページ目革命」

提案書の構成を根本的に変えます。従来の「会社紹介→製品説明→価格」という流れを捨て、「顧客の課題」を起点にした構成に変換します。

  1. 1ページ目:顧客の課題を「顧客自身の言葉」で言語化
  2. 2ページ目:その課題が放置された場合のリスクを具体的に提示
  3. 3ページ目:解決の方向性(まだ商品の話はしない)
  4. 4ページ目:同業種の成功事例(Before/Afterの数字付き)
  5. 5ページ目:自社ソリューションの紹介(ここで初めて商品の話)

 

この順序を守るだけで、顧客の「自分事化」が進み、提案の説得力が格段に上がります。

解決策5:「48時間フォローシステム」の導入

提案後の「沈黙期間」を排除するために、48時間以内に実行する3ステップのフォローをシステム化します。

タイミング

アクション

内容

商談当日

お礼メール

商談の要点まとめ+「次のステップ」を明記

24時間後

価値提供

商談で出た課題に関連する事例・記事・データを送付

48時間後

次のアクション提案

具体的な次のステップ(デモ、トライアル、社内勉強会等)を提案

 

💡 ポイント:「売り込み」ではなく「価値提供」でつながる。顧客が「この人は売りたいのではなく、助けたいのだ」と感じるフォローを設計する。

解決策6:「営業プレイブック」でプロセスを可視化する

スポーツの世界では、優秀なチームは必ず「プレイブック」を持っています。営業も同じです。商談の各フェーズで「この状況ならこのアクション」という判断基準を明文化します。

具体的には、以下の5フェーズごとに「判断基準」と「定型アクション」をドキュメント化します。

  1. リード獲得フェーズ:ネガティブペルソナでフィルタリング
  2. 初回接触フェーズ:ファースト・5ミニッツ設計図を実行
  3. 課題特定フェーズ:買わない理由マップで深層にアプローチ
  4. 提案フェーズ:課題起点の提案書を提示
  5. クロージングフェーズ:48時間フォローシステムを実行

このプレイブックがあることで、「センス」ではなく「プロセス」で営業が回り始めます。新人もベテランも同じフレームワークで動けるので、チーム全体の販売戦略として機能します。

第4章:「解体新書」実践ロードマップ(45日間)

一度に全てを変える必要はありません。以下の45日間ロードマップで、段階的に導入していきましょう。

フェーズ

実施内容

担当

期待成果

Week 1-2解体期

失注データ分析+ネガティブペルソナ作成

マネージャー+データ担当

「追わない顧客」の明確化

Week 3-4再構築期

ファースト・5ミニッツ設計+提案書テンプレート改訂

チーム全員でワークショップ

初回商談の質が向上

Week 5-6実践期

買わない理由マップ+48時間フォローシステム導入

各営業担当が実践

フォロー漏れが激減

Week 7検証期

営業プレイブック作成+成果検証

マネージャーが取りまとめ

再現可能なプロセスが完成

第5章:成果を測る「真のKPI」を設定する

従来の営業KPI(訪問件数、提案数、売上額)だけでは、PDCAの「どこ」が機能しているか見えません。以下の「過程KPI」を加えましょう。

過程KPI

計測方法

目標値の目安

初回→第2回商談率

初回訪問後に2回目が設定された割合

60%以上

提案→成約転換率

提案書提出後の成約割合

30%以上

48時間フォロー実施率

商談後48時間以内に3ステップ完了の割合

90%以上

失注分析実施率

失注案件のうち原因分析が完了した割合

80%以上

 

これらの過程KPIを週次でトラッキングすることで、「Check」が「数字の確認」から「プロセスの診断」に変わります。そして「Act」が「気合い」から「具体的な打ち手」に変わります。これが、PDCAが本当に「回る」瞬間です。

エピローグ:「売れる人」は営業しない

本記事のタイトル「売れる人は営業しない」の真意をお伝えします。

本当に成果を出す営業パーソンは、「売り込み」をしていません。彼らがやっているのは、顧客の課題を見つけ、言語化し、解決策への橋をかけること。それは「営業」というより「コンサルティング」に近い行為です。

そして、そのコンサルティング型の営業を「再現可能なプロセス」に落とし込み、チーム全体で回す仕組みを作る。それが「販売戦略」であり、「本物のPDCA」の姿です。

「形だけのPDCA」を解体し、「顧客起点のPDCA」を再構築する。その先に、成約率と売上の勇的な変化が待っています。

 

まずは今週、過去3ヶ月の失注案件を5件ピックアップして、「なぜ断られたのか」をチームで議論することから始めてみてください。

その30分の会議が、あなたのチームの「解体新書」の第1ページになります。

 

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